翼をなくした天使達


耳をすますと蒼井の足音が聞こえる。こっちに近付いてるみたいだけど私は顔を上げられない。


「お前さ、こっちで同じ事した時最初になんて言った?………すごい事したって自分で言ってたじゃん。だからそれはすごい事なんじゃねーの?」

「……」

「いい加減、自分を褒めろよ。馬鹿」

ポツリとコンクリートが濡れたのは雨なんかじゃない。

確かに私はいじめられてる人を見て知らん顔なんて出来なくて、それによって今度は自分が傷付いた。

やらなきゃ良かった。ちっぽけな正義なんて振りかざさなきゃ良かったって思い続けてきた。

1回目はただの勢いだって自分を責めても、
2回目はただの勢いだけじゃないと自分を褒めていい?

あの日々を引き換えにしても私は間違ってなかったの?


「お前は正しい事をしたんだよ」

頭にポンッと置かれた手。

びっくりして顔を上げると蒼井が優しい顔をしてた。

「誰かがお前を笑っても俺はお前を笑わない。
だからもう少し背筋伸ばせ。クズみたいな奴らに埋もれるな」

本当はずっと誰かにそう言って欲しかった。


「ったく、泣くなよ。ブス」
「いたたたた」

つねられた頬。相変わらず馬鹿力で本当に痛いけど、心の痛みは和らいだ気がする。


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