翼をなくした天使達



「いいじゃん別に。ここで単位取れなくても進級できなくてもどうせ現実じゃねーんだし」

そ、それはそうだけどさ。でももしずっとこのままだったら………


「ここが死後の世界って可能性はないんだ。そしたら私達一生ここにいる事になるんじゃない?」

半分冗談で半分本気。

だって現実の私達が今どうなっていて、これからどうなるのか、なんて考えても分からない。

「………そん時はそん時で考えればいい。ほら」

蒼井は私の話をサラリと流して頭痛薬を手渡した。保健の先生はいないみたいだし私が寝てたから薬だけ置いといてくれたっぽい。

「飲んで今日は早めに寝ろ」

蒼井ってたまに、本当にたまにだけど優しいんだよね……。

それにしてもさっきの夢はなんだか後味が悪かったな。あーゆうのテレビで見た事がある。

なんだっけ、幽体離脱?

魂だけ肉体から離れて空から自分を見てるっていうアレ。

私が最後に触れようとしてたのは人だった。雨の中でうつ伏せに倒れている誰か。そしてそれは
二人いて同じ制服を着た男女だった。

顔は見えなかったし確信はないけど、

あれは私?それで隣は蒼井だった?

ドクドクと流れていた赤いものは血で、どちらのものか分からないけど思い出すだけで今も寒気がする。

もしかしたら……あの夢は…………
……………


「痛っ!なにすんの?」

突然デコピンをされて私は額を押さえた。

「お前がボーっとしてるからだろ。ほら、帰るぞ」

「帰るってどこに?」

「あ?じゃ、てめぇは朝までここに居るんだな?」

「嘘うそ。帰ります」

約束なんてしてないけど私は蒼井と学校を出た。生徒は委員会と部活動をしてる人達しか残ってなくて、雨上がりだからかグラウンドを使う部活は休みらしい。

蒼井とこんな風に帰ってるなんて変な感じだ。


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