翼をなくした天使達


でも確かな事はある。砂嵐の中に見えた私の確かなもの。

今朝は言えなかったけど……

私は背を向ける蒼井にポツリと言った。
 

「私の一番の友達もね……変わった人のひとりみたいなんだ」

蒼井のパラパラと漫画をめくる手は止まらない。相づちすらないけど耳はちゃんとこっちに向いてる。

「なんか記憶の中では別人で全然今と結び付かなくて……。むしろそっち方がニセモノなんじゃないかって思うぐらい」

「……」

「でも、やっぱりあれは私の記憶なんだよね」

「認めるんだ」

蒼井がたった一言だけ返してきた。


ずっとフラッシュバックする記憶は額縁の中で起きてる事を見たり聞いたりしてる感覚だった。

例えて言えば

泣ける映画を見て切ない気持ちが残ったり、
ホラー映画を見て恐怖心が消えなかったり、

そんな余韻が残るから気持ちが乱れるんだと思ってた。

だけど回数が増すたびに余韻だけじゃ終わらない。

まるで額縁の向こうから手を伸ばされているような気がして気持ちが引っ張られる。

苦しいとか悲しいとか辛いとか、映像の中で感じる気持ちが今の私の心に覆い被さるみたいに。

認めたくない。
でも認めなきゃ。

認めないとこの気持ちに理由がつかない。

あれは私。

あの映像や声。嫌な言葉や人間関係。
あれは全部私が経験した事。

もう心が気付いてる。



「ねぇ、蒼井。私向こうの世界で………
いじめられてた?」


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