翼をなくした天使達
●壊れた心
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は屋上にいた。
冷たいコンクリートの上で膝を抱えて、少し強い風が髪の毛をさらっていく。
まだ心臓がうるさい。
落としたはずの欠片が次々埋まっていく感覚。
だけどそれは嬉しい事じゃない。
全て思い出してしまった。
現実世界でなにがあったのか、
どうして私はここにいるのか、
忘れていた方が幸せだったのに。
「なにしてんの?」
後ろで声がした。屋上のドアは錆び付いて開けると必ず音がするのに〝らしく゛ないことをする。
「分かってるくせに聞かないで」
私はあれから午後の授業を全部サボった。とゆーか今さら授業なんてどうでもいい。
蒼井がなんでここに来たのか知らないけど恐らくどこかで私の事を見かけてまた付いてきたのだろう。
「私やっぱり向こうでいじめられてたよ」
もしかしたらと思ってたけど誰が、なんの為に、
までは思い出せなかった。だけど今なら全てが分かる。
「私をいじめてたのは橋本さん。
……ううん、橋本まりえだったんだ」
友達だった。1番仲が良かった。それなのにひび割れた亀裂は元に戻らなかった。
「私、いじめられてた人を庇っていじめに合ってた。今だってそう。橋本さんがいじめられてるのを見てられなくて口出しして、それでまた1人になってる」
「……」
「笑っちゃうよね。庇ったはずの橋本さんが現実では私をいじめてたんだよ?本当に私って馬鹿……
何をしてるんだろう」
可笑しすぎて苦笑いもうまく出来ない。