それでも僕が憶えているから
Chapter.4 ふたつの願い



《1》


毎朝、目が覚めるたびに無意識に願っている。

今日という日が幸せでありますように。

蒼ちゃんが、そしてホタルが、どうか幸せでありますように――と。





「何、本当か!?」


キッチンで朝食のパンを焼いていたら、廊下の方でおじいちゃんが叫んだ。

誰かと電話をしているのだろう。相手の声はもちろん聞こえないけど、おじいちゃんの声色だけでいいことがあったのだとわかる。


「ああ、アポはお前に任せる。でかしたぞ、乾!」


また乾さんか。わたしはうんざりした気分で冷蔵庫からバターを取り出した。

最近、おじいちゃんの会社は首都圏進出を狙っているらしく、その足掛かりとなるコネ作りに乾さんが貢献しているらしい。きっとお得意のおべんちゃらを存分に駆使しているのだろう。

わたしは食パンにバターを塗りながら、壁のカレンダーに目をやった。

……夏祭りの日から5日。
挫いた足の痛みは、もうすっかりひいた。

明日はホタルと一緒に、田尻さんという女性に会いに行くことになっている。
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