それでも僕が憶えているから
Chapter.2 大嫌いな左手



《1》


『僕は、ホタル』


とんでもないやつに関わってしまった。
ホタルなんて名前はちっとも似合わない、傍若無人で獣のような少年。

あいつの話を信じるなら、ホタルは蒼ちゃんの中にあるもうひとつの人格で。

そして、何らかの目的のためにホタルは出てきている、らしい。





「あ、真緒」

「あ、蒼ちゃん」


おばさんのお見舞いを終えて、病院の駐輪場に出たところで蒼ちゃんに会った。

彼は学校のあと一度帰宅してから来たらしく、ラフな私服姿で大きい紙袋を抱えている。


「今日も来てくれたんだ。気を遣わせてごめんな」

「ううん、わたしもおばさんと話すの楽しいから」
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