フカミ喫茶店のワケありアンティーク




日帰りで京都へ行ってから2日が経った。
深海さんは落ち込んだ様子も無くいつも通りで、変わらない美味しいコーヒーを入れては私達を幸せな気持ちにしてくれている。

「お腹空いた」

「……もう12時だからな」

お腹を押さえる空くんに拓海先輩が答える。その絶妙なタイミングで、深海さんがカルボナーラを運んできた。

「お昼にしましょうか」

いつものように一つしかないテーブルに、椅子を並べてみんなで昼食を食べる。これが私達の日常になっていた。

「あ、そうだ……!」

私は今がチャンスと思い、ポケットから昨日みんな宛に書いた手紙を取り出す。

「私、みんなに手紙を書いてきました!」

私の突然の報告に、この場にいた全員が「なんで?」みたいな顔をした。

「これは深海さんです!」

そんな疑問の視線を無視して、笑顔で受け取ってくれそうな深海さんに手紙を差し出す。

「ふふ、嬉しいですね、ありがとうございます」

深海さん、いつもおいしいコーヒーとまかないをありがとうございます。私は、書いた手紙の内容を思い出す。

って、何かくれるから感謝しているわけじゃなくて、深海さんは私達の潤滑剤、優しく見守ってくれる深海さんにいつも救われますって事を伝えたいのだ。

「ワンッ!」

僕には無いのかと言わんばかりに吠えるクラウンに、私はあるものを贈呈する。

「クラウンは、手紙が読めないから、これね」

お皿に犬用ケーキを入れてあげた。
もちろん、日頃の癒しに感謝を込めて、だ。
< 158 / 237 >

この作品をシェア

pagetop