両手いっぱいの花束をあなたに
5.リンドウ


ーザァァッ


今日は、アラームが鳴る前に、激しい雨音で目が覚めた。

私にしては、珍しい。

アラームが鳴る前に起きるなんて。

ディスプレイの時刻は、『6:45』。

いつもより15分早い目覚めだった。


「おはようー」


私はベッドから降りて、窓際に佇むセントポーリアに歩み寄り、その花をツンッと人差し指で触れた。


それに合わせて、ユラユラと揺れるセントポーリアが、私に「おはよう」って言ってくれている、私はそう勝手に解釈してる。


「すごい雨だなぁ……」


そのまま、窓の外を見ると、空は分厚い雲に覆われて、コンクリートを打ち付けるかのような激しい雨が降っていた。



イチョウ並木の大通り沿いにある私の家から、通学や通勤に向かう人達の傘の群れが、咲いた花のように見えて、目を奪われた。




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