両手いっぱいの花束をあなたに
12.両手いっぱいの花束をあなたに



イチョウ並木をただ真っ直ぐ進む。


見慣れた、何度も往復した、この道。


整備された固いコンクリートに足をつけながら、いつもなら周りを見渡して、オーガニックカフェやエステティックサロンなどのお店に気をとられた。


そして、イチョウ並木の途中にあるこの1本の裏道。


私はそこで立ち止まる。


きらびやかな都会の中では異質。


この裏道の入り口に立っていると、まるでその先は異世界のように、今私がいる場所とは違う風が吹いていた。



「最近は、行けてなかったなぁ……」


忙しかったわけじゃない。

でも、心惹かれるモノが、他にも出来たから。


そして、道を抜けた先にたどり着いた、私の大好きな場所。


「元気だったかな?」


『ポピー』の花が植えられた花壇がある、時間があれば、何度も通った、小さな公園。





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