リリー・ソング
シルバー

「あぁそうそう、俺、18でデビューしてるから。もう5年?」
「長いのね。」
「て言ったって、リリーだってデビューは同じだろ? 23なんてすぐだよ。それにこの業界じゃまだまだ新人。まだ高校生の役とか全然来るし。」
「今回もそうよね、初めは。」
「また制服だよ。早く30くらいになりたいなあ。」

紺が相変わらずの銀髪をかき上げて天井を仰いだ。
紺、と呼ばないと怒られるし、敬語もやめろと言うので、従うことにした。

「アイドルは若いほうがいいんじゃないの?」
「別にジジイになったってアイドルはアイドルだよ。」
「そういうもの?」
「リリーだっていくつになっても歌うだろ。」
「…そうね。そうかもしれない。」

佐藤監督の映画は"アネモスコープ"というタイトルになったらしい。
その名の下に、今日は親睦会が開かれている。
そのわりには、肝心の監督はまだ現れていないし、深夜は遅れるらしいので、手持ち無沙汰の私は主演である紺を独り占めしてしまっている。

「高校生のラブストーリーのドラマとか映画とか、胸キュン系? そういうの死ぬほどやったよ。」
「確かに、そういうのしっくりくる顔してる。」
「漫画原作の顔だろ? 俺、王子顔だからなぁ。」

悪いことみたいに言っている。妙な人だ。売れっ子も色々あるんだな。
と、ぼんやりその甘い横顔を眺めていたら、ふっと紺が顔を上げた。

「…あ。」

視線を追うと、開けられたままのドアから一人の男性が入ってきたところだった。紺だけじゃなく、その場の空気全体がピリッとした。監督だ。
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