ばくだん凛ちゃん
「おかえり、ハル」

夜8時を過ぎて透が家に帰って来た。
久しぶりの感覚。
私は透を見てニッコリと微笑む。
透も私を見つめて微笑む。

それを見ると胸がギュッ、と締め付けられる気がする。

…再会してから、もう1年半という年月が過ぎているのに。

子供も2人目が出来たのに。

私、まだこの人にずっと…。

恋をしたままなんだ。



「どうしたの、ハル?」

そう声を掛けられてハッと我に返った。

じっと透の顔を見つめていた。

「…何でもない」

私はお座りしておもちゃを握りしめている凛を抱っこした。

恥ずかしい気持ちも抑え込むように。

「ハル」

透は私の背後に座り込むと私と凛を抱き締める。

一瞬、ビクッとしていまった。

胸のドキドキが止まらない。

「ハル、おかえり。
出産まで入院しなくて本当に良かったよ」

透、それ以上。
もう何も言わないで。

私、泣きそう。

この腕の温もり。
透の声。

何もかも全てが愛しくてたまらない。

「あ〜!」

凛が上を見上げて私と透の顔を交互に見て笑う。

「凛、良かったね。
お母さんが帰ってきてくれて」

透の言葉の意味なんてまだ凛にはわからないと思うけど。

凛は嬉しそうに笑っていた。



私達はしばらくこの体勢で過ごした。

何とも言えない、穏やかな時間だった。
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