大人の初恋
6 落ちる蜜月
9月ーー
 彼と付き合い始めて半年が過ぎていた。

 今までのカレは皆年下か同級生だったから、年上の、しかも8つも目上のカレは、成瀬サンが初めてだ。
 
 彼とのデートの頻度は週に1か2回くらい。
 これまで年下や同年代のカレとの、お家でゴロゴロやカラオケ、ゲーセン、ファミレスコースとは一味違っていた。

 クラシック・コンサートであったり、歌劇みたいな芸術鑑賞だったり。
 最初はちょっと怯んだものだが…

「すまないね。この年齢で若い人の遊びは…ちょっとね」
「ううん。私、この方が好きだわ」
「なら良いけど」

 ちょっぴりハイグレードなデートコースは、すぐに私を満足させてくれるようになった。

 彼がそれらの楽しみ方をきちんと教えてくれたからだ。
 しかも、鼻にかけたような知識のひけらかしでなく、高尚な解説というよりは、ポイントだけを砕けた口調で語ってくれた。

 それは27歳という年齢の、私の向上心を十分に満たしてくれたし…

 何よりその間、彼の傍らに寄り添って、深くて優しい声色を一人占めできる空間は、タマらなく魅力的だったから。
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