大人の初恋
8 苦い真実
 私は悟(さと)った。

 “コイ”は対等じゃないものだ。
 惚れた側が徹底的に弱い!

 ここ数日間、考えに考えて私は決めた。

 ちゃんと仲直りして、かまけずに仕事も頑張って、いい“カノジョ”になる!と。

 だって。
 私はまだ別れを告げられたわけじゃない。成瀬サンの恋人ままなのだ。


 今朝、成瀬サンに
“謝りたいので 時間もらえますか?”のメールをした。
 
 ついでに、アキちゃんにも謝る。あれは完全に私が悪かった。

 人ってトコトン落ちると、あとは上がっていくしかないもんネ。

 よおし、ガンバルゾー。オー‼


 勢いこんで1時間前に出社すると、アキちゃんが私のデスクを拭いているところに出くわした。

「あ……」
 空気が一瞬、緊張した。

「す、スミマセンっ、すぐ終わりますから」
 慌てて逃げようとした彼女に、私は構わず近づいた。

「もしかして…いつもソレ、やってくれてる?」
「今年から、ですけど」

 彼女はへへっと笑った。

 (セーノっ!)
 心の中で掛け声をかけ、勇気を出して彼女に告げる。

「変な態度とっちゃってゴメンっ……その、私。叱られたのが悔しくって……アキちゃんに八つ当たりしてたよ」

 彼女がポトリと台フキを落とした。

「私こそ…ちゃんと催促すれば良かったって……先輩っ」 

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