大人の初恋
2 逆ナンしたら
「すっげえっ、コレってベンツの鍵じゃん!」

 車を見てきたマスター、リョウちゃんが興奮した様子で戻ってきた。

「ひぇっ…」
「いや~、いいねぇ女は。羨ましいなぁ」

 サッと酔いの冷めてしまった私は、茶化す彼に慌ててすがった。

「やだ、そんなの貰えないよ。
 返すから…ね、リョウちゃんっ、連絡先教えてっ?
 会員データあるんでしょ?」

「何だよ、連絡先も交換してねぇの?……まあ…待ってて」

 私はホッと一息ついた。
 冗談にも程がある。
 
 やがて奥から出てきた彼は、困ったように眉根にシワをよせている。

「ダメだ。名刺も貰ってないし“成瀬”って紙に書いてもらっただけ…誰かの紹介だったかな……」

「“ナルセ?”……何よソレ、会員制の意味まるでないじゃない」

「…良かったら…預かっとこうか?また来たら返しといてやるよ?」

 下心丸見えの顔で、マスターは手を伸ばした。私はサッとキーを持った手を遠ざける。

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