100万回の祈りをキミに

・黒い予感





窓の外は北風が吹いていて、わずかに残っていた葉っぱたちが木からさらわれていく。


「あーやべぇ。完璧風邪だわ」

隣で鼻をすすっている夏井。

いつもだったら冷めた目で見るところだけど、残念ながらその余裕はない。だって……。


「ゴホ……ゴホゴホッ……」

そう、私も風邪をひいていた。

「お前のがうつったんだよ」とティッシュで鼻をかむ夏井が睨むけどそれはこっちのセリフだ。

元はといえば先に鼻声だったのは夏井のほうだし。

予防は一応してたのに最悪だ。


「先生……風邪薬ありますか?」

2限目の授業が終わって休み時間。私は耐えられなくなって保健室に行った。

風邪なんて小学生以来ひいたことないのに、どんだけ夏井の菌は強力なんだって話。

頭がクラクラするし、とりあえず薬を飲んで次の授業ぐらいサボろうと思ったら、夏井が先に先生から薬をもらっていた。


お互いにお前のせいだと睨み合って私も薬をもらった。

「同時に風邪ひくなんて仲良しねー」と先生にからかわれたけど否定する気力もない。


私は右側のベッドに寝ることになって、これ以上うつされないように隣のカーテンをしっかり閉めた。


「あーマジで誰かさんのせいで鼻声ヤバいわー」と隣から嫌味ったらしい声がする。

だんだんイライラしてきて私は夏井に叫んだ。


「あのねー、先に風邪ひいてたのアンタのほうだから!まったくバカは風邪ひかないっていうのにさぁ」

「あー俺天才だからな」

「………」

ダメだ。夏井と話してたら悪化する。

< 156 / 258 >

この作品をシェア

pagetop