100万回の祈りをキミに



「波瑠と亜紀先輩のお姫さまだっこの話、私も噂で聞いたよ。先輩カッコいいよね。羨ましいな」

「羨ましいってあれは事故だし。それに綾乃彼氏いるじゃん」

「まぁそうなんだけどね。あ、良かったらこれ貰ってくれない?」


綾乃がカバンから出したのはチケットだった。
それにはプラネタリウムと書いてあって、星座のイラストが可愛く描かれていた。


「貰いものなんだけど予定が合わなくてさ」

「いいの?しかも2枚も」

綾乃はきっと彼氏といく予定だったんだろうなぁ。

そういえば凪子天体観測してみたいとか前に言ってたし、せっかくだから一緒に……。


「行ってきなよ。亜紀先輩と」

「へ?……な、な、なんで先輩と?」


自分でもビックリするぐらい動揺してしまった。

するとタイミング良く予鈴のチャイムが鳴って、綾乃は「またね」と教室に行ってしまった。

綾乃は彼氏がいるから全部そっちの方向に考えたいのかもしれないけど、チケットが2枚あるからって先輩と行くなんて……。

ありえない。ありえないよ。


あの先輩を誘うなんてできるわけないし、誘ったところでやんわりと断られるだけ。

ちょっと接点ができただけで図々しくしたくないし、優しくされても勘違いしたりしない。

しないけど……亜紀先輩と行ってきなよ、なんて言うから、そうできたら夢みたいだなぁなんて、思ってる自分がいる。



もしかしたら私はこの頃から知らず知らずに恋をしていたのかもしれない。

ううん。きっと出逢った保健室から私は恋に落ちてた。


一目惚れだったなんて言えなかったけど、いつか私も聞いてみたい。



ねぇ、あなたが恋に落ちた瞬間はいつですか?


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