100万回の祈りをキミに



「えっと、今から明日のプログラム配るからな。各自、自分が出る競技と持ち物のチェックをしておくように」


帰りのホームルーム。早坂先生が配ったのは〝体育祭〟と書かれた白い紙の束。

そう、明日は体育祭。

中学の時は種目の選手を決めるだけで時間がかかるイメージだったけど、高校の今はまるで流れ作業のように選手が決まって、私は全員参加の綱引きと玉入れに出るだけ。


「明日の朝、一斉にグラウンドに椅子を運ぶからいつもより早めに学校にこいよ!じゃ、解散」


バタバタと騒がしくなる教室。

また優勝とかしたら先生がなにか用意してるらしいけど、うちのクラスが運動能力高くないことは先月の球技大会で証明されたし、私はぜんぜん乗り気じゃない。

むしろ雨降ればいいのに、とか思ってる。


「波瑠~お待たせ。帰ろ?」

暫くして凪子が3組にきた。


「藍沢。また明日なー」

「え、うん……あ」

条件反射で返事をしてしまったけど、振り向いたら夏井だった。

夏井はきっと明日はものすごく気合い入れてくるんだろうな。体育祭とか燃えるヤツだし。


「波瑠クラスに馴染んでるね。良かった良かった」

「馴染んでないよ。べつに」


凪子が私のことを心配してくれてるのは知ってる。

目まぐるしいほどの中学2年が終わり、中学3年になったあの1年間。正直、私の記憶は途切れ途切れだ。

どうやって息をして、どうやって生きていたのか思い出せないくらい。

それを一番傍で見て、変わらずに友達でいてくれたのは凪子だけだった。だから凪子にはすごい恩がある。


「そういえば私ずっと思ってたんだけど……」

「なに?」


「夏井くんって昔どっかで見たことない?」


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