100万回の祈りをキミに

・記憶の欠片





「ってか今回の体育祭で一番目立ったの夏井だよね!」


夏井のあの走りを見て久しぶりにほろ苦い部活のことを思い出した。

閉会式が16時30分に終わってそのまま体育祭の打ち上げ中。何回も断ったのにクラスの女子にせっかくだからと誘われるし、貧血で途中参加だった安藤さんもすっかり回復していた。


「あんなに夏井が足速いなんて思わなかった~。部活入ってないの勿体ないね」

「なんかさっそく運動部からうちに来ないかって誘われてたよ!」


たしかに私も夏井の走りにはビックリしたけど、冷静に考えればそんなに大騒ぎするほどのことでもない。


こんなに注目されて、さぞ調子に乗ってるんだろうなと思いきや夏井はいつも通りだし、褒められても「たいしたことじゃねーよ」と流す。

逆にそれが気に食わなくて、私は夏井の顔を横目で見ながらジュースをストローですすった。


「そういえば私の荷物、藍沢さんが運んでくれたんでしょ?お礼言えてなかった。本当にありがとうね」

安藤さんはまた私の隣。

打ち上げは親睦会と同じでカラオケボックスだった。もちろん体育祭で優勝できたわけじゃなく、参加費は自費。


「私は途中からだよ。椅子も荷物も運んだのは夏井」

「うん。知ってる。夏井にもお礼言ったけど藍沢さんにも言いたかったから」


安藤さんは貧血が落ち着いて自分の競技にもちゃんと出ていた。私は全員参加の二種目だけだったけど。


「夏井っていつもバカなことばっかりしてるけど優しいところもあって良いヤツだよね」

「……そう、かな?」


私は腑に落ちない返事をした。

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