食わずぎらいがなおったら。
家について、今度は普通に、お邪魔しますと上がって来た。

ほんとに広いね、と今さらなことを言う。前にも来たでしょ。

前回さっさと追い出されたからよく覚えてないんだって。寝ぼけてたもんね。

落ち着かなくて、お茶でも入れようとキッチンに行こうとしたら、後ろから抱きしめられて、今すぐ食う、と宣言された。




「昼間だよ」

「別に気にしない」

勝手なことを言ってソファに押し倒される。

すぐに唇が重なって、それこそ食べ尽くすように執拗に、気が遠くなるほどキスされる。



思わず息が漏れると、昼間っからそんな声出すなよ、と意地悪く囁かれて。そのまま耳に舌を入れられてまた声が漏れる。耳が弱いって知ってるくせに。

首筋に顔を埋められて思わず身体をよじると、顔を上げて苦しそうに細めた目で熱っぽく見つめられ、もう我慢できない、と膝を割られた。

ベッドでしてってお願いしても、後で、と取り合わずそのままもつれあうようにキスをしながらソファで抱き合った。





そのあとも、コーヒーを飲んだり、ご飯を作ったりしてる合間に、隙があればキスされ触られ、結局ベッドでしたのは夜になってからだった。




眠る寸前に腕の中に抱きしめられ、明日になってまたごちゃごちゃ言っても、もう離さないから、と念を押される。

そうか、意外と不安なんだ、と初めて気づき。

もう一度踏み出せなかったのは同じなのかとおかしくなって胸に顔を押し付けたままでくすっと笑った。



何笑ってんの、と眠そうな声で言った直後にはもう寝息を立て始めていた彼の腕の中で、しばらく振りにぐっすり眠った。
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