せめて、もう一度だけ
進んでゆく
水曜日の朝。


いつもと何の変化もない朝の光景が広がる我が家。


築6年のマンションだけど、会社が家賃を補助してくれてるから、駅近で諒の勤務先にも乗り換えなしで行ける。


「いってきます」


「いってらっしゃい」


玄関のドアが閉まった瞬間から、私は遼くんのことを考えてしまう。


それは抗うことのできない、どうしても変えられないもののようで、でもとても愛しい気持ちだった。



10時に、この前と同じコンビニで待ち合わせした。


車に乗りこんですぐ、


「この前はごめん、焦ってたんだよな、俺」


遼くんはまっすぐ私を見て謝った。


「謝らないでよ、私は、その・・・嬉しかったんだから」


「それはさ、ミキも俺と同じ気持ちってこと?」


「・・・うん」


遼くんは照れてるのか、少し顔が赤かった。


「今日はさ、俺んち来ない?」


「えっ?」


思わぬ展開に、つい驚いてしまった。


「何もしないとは自信もって言えないけど、ミキの気持ちを確かめたくて」


「何もしないでよ」


「どうかな」


そのまま車は走り出し、遼くんのアパートへ向かった。



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