せめて、もう一度だけ
「楽しみだね、なにしよっか?」


「せっかくだから、どこか遠出するか」


「贅沢な悩みで、なんかうれしい」


「じゃ、またな」


遼くんは、おでこにチュッと優しいキスをして、仕事へ向かった。



事務所に入ると、小宮さんに小声で聞かれた。


「田辺くんとつきあってるって、ほんと?」


「・・・はい」


「松永さんって、結婚してたよね?」


「ええ、でも夫は知ってます」


「じゃ、離婚するわけ?」


「私はそうしたいんですが、夫が賛成してくれなくて」


「なんか、映画みたいで信じられないけど・・・田辺くん本気なのかな」


「なにか知ってるんですか?」


「元カノもやっぱり、ここの事務員さんだったから」


少しショックだった。


元カノがいても当然だけど、初めて聞いたから。


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