せめて、もう一度だけ
「今夜は、ずっと一緒だね」


「マジうれしい。


今まで『帰したくない』って言葉を、ずっと飲みこんできたから」


「そんな風に思ってくれてたんだね」


素直に、嬉しかった。


嬉しかったけど、ふと小宮さんの言葉が浮かんだ。



『元カノも、ここの事務員さんだったから』



聞いたら、遼くんはたぶん、本当のことを言ってくれるだろう。


それを確かめたところで、何か変わるとは思えない。


でも、知りたい。


元カノと、どんな風につきあっていたのか。


いつどうして、別れたのか。



だけど、夫がいる私に、そんなことを聞く資格はない。


遼くんは、私以上にツラくてせつない思いをしてるから。



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