せめて、もう一度だけ
離れてゆく
結局、仕事は2週間休んだ。


その間、家事はほとんどしないで、ベッドで寝てばかりいた。


「安静にしていることが、何よりも大事ですよ」


医師の言葉が効いたのか、諒は早起きして洗濯をして、朝晩の食事を作ってくれた。


食事は、スマホ片手に格闘して『男子でも作れる!』みたいなサイトに書いてある通りにやっていた。


掃除は苦手なのか、帰宅後にササッと済ませていたけど。


週末になると、1週間分の買い出しをして、少し念入りに掃除をして、赤ちゃんがお腹の中でどんな風に成長していくのか調べたりしていた。


私は、そんな諒を見ながら、遼くんのことばかり考えていた。


何度も何度も、遼くんに電話やメールをしようとした。


でも、どうしても、できなかった。


私が何か話すことで、きっと遼くんの傷口を広げてしまうから。



ふたりで産婦人科へ行き、安定しているので、事務仕事なら続けてもいいと許可をもらった。


「美希子、よかったな」


「うん、仕事に戻れる」


「えっ、仕事する必要ある?」


諒の言葉に驚いた。


「仕事しちゃいけないの?」


「せっかく赤ちゃんが安定してるって言われたのに、余計な負担をつくることないだろ」


「仕事は負担じゃないし」


「別に金銭的に困ってるわけじゃないんだから、辞めろよ」


「そんな無責任なこと、できないよ。


あとで電話してみるから」




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