せめて、もう一度だけ
諒の言う通りだ。


私は、何も知らなかった。


あとで調べたら、裁判までいったら認められないっていうことみたいで、話し合いで解決できるなら離婚はできる場合もあるらしいけど。


どっちにしても、時間はかかるし、諒に納得してもらうには慰謝料っていうお金が必要になってくる。



そのうち、赤ちゃんが産まれてきてしまう。


この子が産まれた時、目の前の父親は誰なんだろう。


遼くんに、そんな重荷を背負わせてしまっていいんだろうか。



大人になっていくにつれて、諦めることが得意になってきた。


10代の頃は、ドラマを見逃したりすることは致命傷だった。


30代になった今、1話も見逃すまいと必死でドラマを見ることはない。


若い頃は、流行を追わなきゃいけないし、みんなとの話題になるようなネタを探しまくっていた。


今は、流行にも疎いし、友達と積極的に会うこともない。


毎日、同じような日々を送っているだけ。


諦めることができなかった若い頃とくらべたら、今は諦めてばっかりの毎日なのかもしれない。


最近は、諦めることが必要なほどの欲求すらなかったけど。



遼くんのことは、諦めないといけないのかも。



< 82 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop