キミの隣で恋をおしえて〈コミック版:恋をするならキミ以外〉
08.チョコと二人の行方。
目まぐるしく年が明け、新学期が始まった。
「え、え、えぇええぇぇ…!!!」
「しっ、しーーー!!!!!」
親友、なべっちの絶叫を両手で止め、周囲を見渡す。
ここは北風ぴゅーぴゅーの渡り廊下だ。
天気がいいことが唯一の救い。
「内緒にするって約束で、許可もらったんだから!」
冬休み、安堂くんに頼みこんで許可をもらった。
先生のことは伏せて、キス仕様の写メのことやキスマークとかそういうことも全部内緒で、お弁当係ということだけ教えていいって話になった。
『じゃないと、友情にひびが…っ!!!』
泣き付いたあたしに、安堂くんは呆れたため息を零していた。
「うそー、マジで気付かなかったぁ…!あたし、知枝里のお弁当に酷いこと言ってごめんね」
『安堂くん、悲惨なお弁当食べてる』
友の言葉を思い出した。
「ううん…、いいのよ。あの時は本当に酷かった…」
「え、じゃあもしかして、あたしとお弁当食べなくなってから、ずっと安堂くんと一緒に食べてたの?」
なべっちの質問に、数秒のタイムラグを経てから、小さく頷く。
「うらやましい~~~~!!!!」
そんないいもんじゃないんだってば。
結構注文多いんだから。
「っきゃー、玲美たち、知ったら嫉妬で爆発するかもなぁ」
「い、言わないでよ!?」
「分かってるよ。じゃあこうなれば、今年は一緒にチョコ作りだね!」
なべっちのウインクに、あたしはぽかんと口を開けた。
確かにメディアは先取りで、年が明ければもう、CMも雑誌も街の中も、バレンタインを煽る広告が目白押しだ。
(どうしよう……)
なべっちは大きな誤解をしている。
あたしが安堂くんのことを好きだと勘違いしている。
でもそこを否定してしまうと「じゃあ何でそんなことしてるの?」と言われた時、言い訳がつかない。
だからこのまま、勘違いしてもらっていた方がいいんだけど…。