恋は理屈じゃない
LOVE*10

結婚式当日


お姉ちゃんが笠原さんの子を妊娠していると知った両親はとても驚き、同時にふたりを責めた。しかし何度もウチを訪ねて頭を下げる笠原さんの真摯な態度に折れ、両親はふたりの結婚を認めた。そして笠原さんの両親も上京すると、顔合わせのために食事会が開かれた。

結婚に向かって順調に事が進んでいくのはうれしい。けれど、ずっと一緒に育ってきたお姉ちゃんが、お嫁にいってしまうのはとても寂しかった。

矛盾する気持ちを抱えながら毎日を過ごして迎えた十二月中旬第二週の土曜日の今日は、ホテル・グランディオ東京でお姉ちゃんと笠原さんの結婚式が執り行われる。

結婚披露宴会場の装花を担当するのは、もちろんこの私。更衣室で制服に着替えていると、なにやら興味深い話が聞こえてきた。

「ねえ、ウチのホテルと料亭さくらいが提携を結んだって話、知ってた?」

「うん。昨日、先輩から聞いた。今までいろんな企業がさくらいに提携話を持ちかけたけど、経営者で料理長の櫻井惣次郎(さくらい そうじろう)が全部断っていたんだって」

以前、速水副社長に料亭さくらいに連れて行ってもらったことを思い出す。

あの時は速水副社長に純米酒を勧められて、記憶がなくなるほど酔ってしまったんだよね……。

懐かしい出来事を思い出しながら、彼女たちの話に耳を傾けた。

「それなのに、どうして独占契約を結べたんだと思う?」

「さあ、どうして?」

「速水副社長が櫻井惣次郎の娘とお見合いしたからだって」

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