恋は理屈じゃない

「俺は鞠花ちゃんのことが今でも好きだ」

速水副社長の口から突然紡がれた『好き』という二文字が頭の中で何度もリピートされる。そして鼓動がドキドキと高鳴って頬が熱を帯び始めた。けれど、すぐに疑問が生じる。

「今でもって……どういう意味ですか?」

私の顎に触れていた速水副社長の手が離れる。

「遊園地に一緒に行っただろう?」

「はい」

ジェットコースターに乗ったり、お化け屋敷に入ったり、楽しく過ぎた遊園地デートのことが頭によみがえる。

「あの日以来、俺は鞠花ちゃんのことが気になるようになった」

「……っ!」

そんなに前から私のことを?

信じられない事実に驚き、唖然としながら速水副社長を見つめた。しかし釈然としない思いが胸の中で燻り始める。

「でも副社長はお見合いをしたじゃないですか」

「付き合いで仕方なくな……。結婚する気などなかったからすぐにお断りした」

初めて知った事実に驚いたものの、速水副社長が結婚しないとわかりホッと胸を撫で下ろした。それでも、まだわからないことがある。

「どうしてお見合い相手と結婚するって、嘘をついたんですか?」

「それは鞠花ちゃんに俺をあきらめてもらおうと思ったからだ」

「副社長をあきらめる?」

意味がわからず首を傾げる。

「うぬぼれていると思われるかもしれないが、鞠花ちゃんが俺に好意を持ってくれていることは薄々気づいていた」

まさか、嘘でしょ?

うろたえながら速水副社長を見つめる。

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