恋は理屈じゃない

記憶にないお姫様抱っこ


窓から差し込む日差しがまぶしくて目が覚める。部屋の壁掛け時計の短針は十の文字を指していた。ベッドの上で上半身を起こすと、頭を棒で叩かれたような激痛に襲われる。

「痛っ!」

指でこめかみを押さえると、昨日の出来事を思い返した。

昨日は仕事終わりに速水副社長とバッタリ会って、料亭に連れて行かれたんだった。じゃあ、これって二日酔い?

ズキズキと頭が痛む中、純米酒を飲みすぎたことを後悔した。上半身をベッドに再び倒すと痛みが治まるのを待った。

私の父親が社長を務めているフローリスト須藤は、ホテル・グランディオ東京内に店舗を構えている関係で、結婚披露宴装花の独占契約を結んでいる。

店舗の管理を任されているのは、母親とお姉ちゃんとベテランの加藤さん。結婚披露宴の装花作業にあたるのは、杉山さんと増田さんと工藤さんと私。繁忙期はアルバイトを雇って乗り切っている。

今日は装花作業も準備もない月曜日。週一度の貴重な休みだ。

このまま二度寝しちゃおうかな……。

そう思って瞳を閉じる。けれど、頭の痛みは一向に治まらなかった。

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