恋は理屈じゃない

父親は誰?


東京プラチナガーデンに到着したタクシーから降りると、エレベーターで最上階に向かい、バーに入る。

「うわぁ、綺麗……」

案内された窓際のカウンター席から東京の夜景を食い入るように見つめていると、横から速水副社長に聞かれた。

「鞠花ちゃんはなにを飲む?」

即答できるほど、私はカクテルに詳しくない。

「えっと……」

慌ててメニュー表を見つめると、速水副社長がクスリと笑った。

「俺が決めてもいいか?」

「お、お願いします」

私とは違い、場慣れしている速水副社長が頼もしい。

「マティーニとベリーニを」

「はい。かしこまりました」

オーダーを受けてさがっていくウエイターの後ろ姿を見つめながら、考える。

マティーニは知っているけれど、ベリーニというカクテルの名は初めて聞いた。いったい、どんなカクテルなんだろう……。

ひとり頭をひねる。

「ベリーニはスパークリングワインとピーチネクターのカクテルだ。爽やかで甘いから、飲みやすいはずだ」

まるで私の心を透視したような速水副社長の言葉に驚いてしまった。

「どうして私が考えていたことがわかったんですか?」

速水副社長に尋ねると、彼は頬杖をついてクスッと笑う。

「鞠花ちゃんの顔に、そう書いてあったからだ」

「えっ、嘘っ!」

慌てて頬に手をあてる。

「あははは、本当に書いてあるはずないだろ。単純だな」

「うっ……」

またからかわれた。でも単純というのは、認めるしかないみたい……。

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