恋は理屈じゃない

自分の軽率な行動を猛反省しながら、気持ちを落ち着かせるために大きく深呼吸をした。

「副社長、あの、私これで失礼します」

おずおずと口を開いてベッドに視線を向けると、うつ伏せになったままピクリとも動かない速水副社長に気づく。

もしかして、寝ちゃったの?

暗がりが広がる部屋の中、足を二、三歩進めると速水副社長に近づく。ベッドの上の彼を見下ろすと、その背中が規則正しく上下しているのがわかった。

お姉ちゃんと笠原さんに裏切られたんだもん、現実を忘れるほど酔いたくなるよね……。

速水副社長の心情を思うと、胸がチクリと痛み出す。

一度は帰ると決めたのに、少しでも速水副社長の力になりたいという気持ちがコンコンと湧き上がってしまった。うつ伏せになっている彼の身体から、シワにならないようにスーツの上着をそっと脱がす。

「……ん」

あ、起しちゃった?

上着をギュッと胸に抱えながら速水副社長の様子を静かにうかがう。すると彼は、身体をクルリと半回転させると仰向けになった。しばらくすると、また規則正しい息づかいが聞こえてくる。

速水副社長を起さなかったことに安心すると、今度は首元に巻きつくネクタイに手を伸ばした。ゆっくりとネクタイを解くと、ワイシャツの第一ボタンを外す。

これで朝までぐっすりと眠れるよね。副社長、いい夢見てね……。

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