ミニミニ集
水族館(大地×こころ)
「わぁ」

アクリル版の向こうに広がるのは海の世界


「あんまり1人で先にいくなよ」


20代半ばのいい大人のはずだが、迷子として保護されかねない

「見て。鰯の群れ……美味しそう」



「……食べる以外に興味はないのかよ」


綺麗とか、中に入りたいとか



「だって新鮮」


新鮮過ぎる



「聞いた俺がバカだった」



トンネル水槽などを回っていたが、少し目を離した隙に見失った



「ったく」





暫く歩いていると腕章を付けた人間に捕まっていた


「また補導か」

恐ろしいことに補導や職質に慣れてしまった自分がいる



「こころ。免許証」


「あ」

慌て鞄からパスケースを取り出して提示する。見せられた相手は驚いて謝ってきた


「大丈夫です。いつものことですから」



「ご…ごめんなさい」


「だから1人で行くなって言ったよな」


補導や職質ならまだ良い。


恋人になる前から変人キラーと呼べるほどストーカーや誘拐犯、露出狂などを引き寄せる
目を離した隙に事件なんて洒落にならない





「ごめんなさい」


謝る声は涙混じりだ


泣き顔は好きなのだが、外だと犯罪に見えかねない


「外で泣くな。また誤解を生む」


「う……」


「昼何にする?」

機嫌を取り戻すのはこれしかない。


「お刺身」

「……魚かよ」


魚を見て魚を食べた水族館デート


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