ユキヤナギの丘で、もう一度君を好きになる
詩織と会う約束をした日になった。

昨日は本当に長い1日で、バイト先の学習塾は僕が春休みに入ったのをいいことに朝から夕方まで散々こき使ってくれた。

電話受けからテストの丸つけ、授業の手伝いなど……まあ雑用ってやつだ。

大学生になる春からは、晴れて雑用係から講師へと昇格できることになっているからもう少しの辛抱だけれど。

それでも明日また詩織に会える、そう思ったらミミズの這ったような児童の答案用紙も、いつもより可愛らしく見えてくる。

今までだって何度か恋はしてきたのだから初めてじゃないはずなのに、こんな気持ちになっている自分に戸惑う。

そんなこんなで、まるで遠足の前の日の小学生のように昨夜はなかなか寝付けず、危うく寝坊しそうになった。

朝ごはんを食べ損なった僕はとにかく少しお腹に入れようと、軽くヨーグルトとカフェオレで済ませることにした。

せっかくの詩織お勧めのパンが食べられないなんて、お話にならない。

本当なら録画したドラマを見たかったけれど、そんな時間の余裕はなさそうだった。待ち合わせは昼なのに、なんとも情けない話しだ。

まだ時間はあったけれど、ゆっくりと出掛ける支度を始めることにする。

窓からはカーテン越しに陽射しが差し込み、天気がいいことが伺える。

最初のデートなんだから、張り切って待ち合わせより早く到着するくらいでいいじゃないか。
< 97 / 211 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop