古い校舎が見える桜の木の下で
4.別れ
【昨日は、ごめんなさい。そして、合格おめでとう!
願いが叶ってよかったね、
さすが、浩太!約束どおりお祝いしようね。】

と佐々木からLINEが届き、ホッとしたのもあるが、
佐々木は俺を恋愛対象としてみていないような
残念な気持ちになった。

『昨日はごめんなさい』ということば。
もし、俺を恋愛対象として見てくれるなら
もっと違う表現のメッセージが届くのではないかと
つい、深読みしてしまう。
とりあえず【お祝い待ってる】と返した。

今日、俺は佐々木と会うことになった。
佐々木の言う例のお祝いってやつだ。
とりあえず、好きって気持ちを伝えたんだからと
俺は自分に言い聞かせた。

東京のアパートは来月引き払ってしまうことや
いつ長野に発つのかは告げずにいようと心に決めた。
佐々木が何に対して俺に「ごめんなさい」という気持ちでいるのか
知りたいことには違いはないが、それを詮索しないということも…。

俺の頭の隅には、前に佐々木が

「出版社で編集の仕事をしてみたい」

と言っていたことが気にかかっていた。

長野ではまず、そんな仕事はできない。
少なくとも、現に彼女は出版社で働いている。
チャンスがある。
その状況を俺が佐々木といたいがために壊してはいけない。
もし、仮に両想いだったとしても。
今日、彼女と楽しい思い出をつくったら、
距離を置こうと決心した。

< 23 / 57 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop