古い校舎が見える桜の木の下で
5.焦り~side Ayumu
浩太にお祝いを渡して、
じゃあねと普通に別れたのに、連絡が取れない。
連絡先は変わっていないけど、
着拒否なのかつながらない。

どうして?何かあったの?

そういえば、以前浩太のおばあちゃんは
具合があまりよくないって感じの話していたっけ。
おばあちゃん、具合でも悪くて大変な時なのかな…。

この間会ったプチ同窓会メンバーで、
忘年会でもできたらいいなって思って、
浩太と連絡が取りたかった。祐介くんなら何かわかるかな。
とりあえず、祐介くんに電話をしてみた。

「もしもし、祐介くん?佐々木です。」

「珍しいね、佐々木が俺ンところに電話なんて。」

「実はね、浩太と連絡が取れなくて…」

忘年会をやりたいってことだけなら、
祐介くんに相談して、どうにでもなるのになんだか涙が出てきた。

「いや、別になにも聞いてないよ。
連絡先も変わっていないはずだし。」

「私、電話は着拒否で、LINEもブロックされてるみたい。何かあったのかなぁ。
浩太はときどきお婆ちゃんのところに行くって言ってたから、
お婆さまのお身体の具合が悪いのかな。
祐介くんなら何か知っているかと思って…」

「お前、泣いているのか?浩太と何かあったのか?」

私は忘年会をやりたいんじゃなくて、たぶん、浩太に会いたいんだと思う。
祐介くんに電話しながら自覚した。余計、涙が出た。

「特に思い当たることはないの。
一度、LINEメッセージを返すタイミングが
よくなかったことがあったけど…。
二人で浩太の採用試験の合格祝いで居酒屋に行ったときは…。
特にわだかまりもなかったし、
普通に『じゃあね』って別れた…。それっきり。」

泣きすぎて「ヒック」とこみ上げるのを抑えながら、
途切れ途切れに伝えた。

「そんなに泣くなって。とりあえず、俺が浩太と連絡取ってみるよ。
そしたら、お前にまた知らせる。」

「ごめんね。ありがとう。」
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