古い校舎が見える桜の木の下で
8.二人きり
2月に入り、やっと歩と会える日が来た。
先月も会ったが、
祐介と桑原さんがいたから二人きりというのは久しぶりだ。
LINEや電話で連絡は取りあっていてもそれはそれ。
俺たちが育った街から車で1時間くらい離れたところで、
雪上イルミネーションが催されると知り、誘った。

歩が

「実家に立ち寄らないのに、
地元の駅で家族にあって何か言われるといやだから。」

という理由で
イルミネーション会場の最寄り駅が今日の待ち合わせ場所だ。

「歩。」

呼び止めて抱きしめる。歩の久しぶりの感触だ。

「会いたかった。」

歩がつぶやく。

「俺も。まぁ、車に乗って。」

夜までまだ時間があった。
近くのレストランで夕食をとって、会場に向かうことにした。
レストランで食事をしながら、お互いの近況を話した。

「あのね、浩太。
いっつも連絡とりあっていたのに内緒にしていたことがあるの。」

「何?」

内緒といわれてドキッとした。
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