古い校舎が見える桜の木の下で
エピローグ
4月。昔、俺たちの中学校だったところの桜が咲きはじめた。
俺にとっても歩にとっても仕事の面ではとても大切で忙しいときだ。
だからこそ、歩を不安にさせないために
この桜の木の下で桜が咲いているときに歩と会いたかった。
今日は歩とここで待ち合わせだ。
1年前、再開したときは古い校舎があったが、
今では中学校の面影がない。
まだ、完成していないが、
作りかけの防災センターと校舎の一部を活かした文化施設になっている。

「浩太、遅くなってごめん。」

「いや、俺も今、来たところ。」

「あれから1年経つんだね。」

「そうだな。1年前も14年前もここからはじまった。」

「14年前?」

「だって、俺と歩、小学校違うじゃん。
歩と出会ったのは中学1年だろう。」

「あぁ、そうだね。」

「そして…」

「そして?」

「そして、これから新しい二人の関係をはじめよう。」

そういうと俺は用意しておいた婚約指輪を歩にはめた。

「どうしたの、これ?」

「ばあちゃんがじいちゃんからもらった指輪なんだ。
ばあちゃんが
『歩ちゃんに。浩太の嫁さんになる人にこれをはめてもらいたい。』って。」

歩の目が潤んできた。

「えっ。」

歩は言葉にならない声を発した。歩をそっと抱き寄せた。
そして、耳元で

「歩、俺と結婚してほしい。誰のものにもならないで。
俺を信じて待っていてほしい。歩を不安にさせたくない、
だから、思い出の桜の木の下でお前に指輪を渡したかった。」

そう告げた。

俺の胸に顔をうずめた歩は、涙声で

「ありがとう。浩太、大好き。」

とつぶやいた。それを聞いて、抱きしめている力を強めた。

「俺もだよ。歩、愛している。」

桜の木の下で、俺たちは誓いのキスをした。

【完】
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