【完】『大器晩成』
◇1◇

生まれついて眞姫(ジニ)は少し鈍臭い傾向のある少女であったが手先は器用で、幼稚園で折紙を習ったときなんぞは、自分でさっさと作って暇をもてあまし、教諭を困らせてしまったことがある。

小学校に上がると、実家が鶴橋の駅に近いというだけで石を投げられたり、銭湯に入れてもらえなかったりしたことがあって、

「うち、何も悪いことしてへんよね?」

と父親にしつこく訊いて回ることがあり、

「何も知らんでえぇ」

というだけで閉め出され、入れてもらえなかった晩もあったらしい。

そんな眞姫を父親は苦虫を噛み潰したような顔でイライラしながら見ていた。



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