興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
そーっと、そーっとよ。

玄関に近付いた。
カチャッ。ドンッ。

「テッ!」

「…坂本さん…ごめんなさい。家に何かご用でしょうか?」

「…よぅ」

軽く手を上げる。

…。

「よぅ。…それで?よぅ、の後、何かありますか?」

「別に」

…。

「通り掛かっただけだし」

…。

「そうですか、では、おやすみなさい」

…。

「…綺麗な格好してるな。デートか?あ、未だデートじゃないのか」

上手く行ったみたいだな、その顔だと。…フ。
課長と会ってたんだろ?
他に出掛ける用なんて無いもんな、休みの日に…そんな格好で。
…さりげなくお洒落しちゃって…。
話してみたら、やっぱり誤解だったんだろ?
良かったじゃないか…。

「そうです!デートなんかじゃ無いです!」

…何だよ。向きになって言わなくても…。

右手に持つ携帯の画面が目に入った。
一条匠、…登録中か。
連絡先、交換したんだな。
俺は藍原の、知らないっつうのに。
いつでも会える隣人だからか。
…便利なソフレだもんな、俺。

「じゃ、おやすみ」

え?帰るの?…いつもと違ってあっさりしてるんじゃ無いですか?

「あ、はい。おやすみなさい」

あ、…そうだ。
私達、何だか気まずい感じになってたんだった。
…そうだった。
今日の事だって、元はと言えば、坂本さんが、話は聞いた方がいいって言ってくれてた事だったんだ。
そうだった。

カチャ。

「待って!坂本さん、待ってください」

このままにしちゃいけない。とにかく、…駄目よ。
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