興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−

少々“お年頃”を過ぎて来たという事で、親からは当然のようにヤイヤイ言われ始めています。まあ、30が近づいてきてるってことでです。30、30って……。
むしろ焦っているのは親の方が強くて…だからこっちも焦らされて……望まないお見合い話を持って来られるし。
だから…私はとうとう言って終ったのです。

『ずっと付き合っている人が居るけど、今はタイミングじゃないから、まだ結婚はしないだけ』って。そしたら、『何だそれならそうと早く言ってくれたらいいのに』、と言われました。…当然、そうなりますよね。
『じゃあ、お節介なおばちゃんにも、もう写真は持って来るなって言わないとな』って。
それはそれで、そうして頂いた方が良いのですけどね。でも事実は、そんな人は居ない……ってことです。

ところで…33歳でおそらく独身?の男性、どう思います?いきなりどう思いますって聞いても返事に困りますよね?訊ねた意図はお相手としてってことです。
勿論、仕事も出来て見た目もいい人です。やはり彼女は居るのでしょうね。
僅かな望みは、社内には彼女は居ないのではないかという事なんです。親密そうにしている人は居ないように思えます。
会議室や資料室とかで、コソコソ会っていたとか、帰りに誰かと居るところを見掛けたとか、そういう噂も全く聞きません。余程、気にかけて会わないようにしているのでなければ、まず居ないという事ですよね。…お家デートばかりなら解りませんが。……決めつけてはいけませんが。完璧に秘密にしているのであればもうそれはそれでどうしようもないことです。でもそれは無いように思えます。だったら、…。
問題は…居るなら社外という事になります。

探偵でもなければストーカー行為に近い事はできませんので、上手く尾行するなんて事もできません。お付き合いしている人が居るのなら、諦めるしかないのですが。
もしかして、あの容姿で居ないのであれば…アチラの可能性もないとは言い切れません。…あくまで憶測です。これは…無いと信じたい部分です。そうなると絶望的です。はぁ。どうなんだろう。

と、まあ……そうこうしている間に、コピーも終わったし。考え事も丁度終わった。
…配ってしまいましょう。
用紙を取り出し、トントンと揃えていた。

「終わりました…」

独り言って……こっちは返さなきゃ…。取り残ししがちだし。全部で…揃ってる。

「藍原…」

「うわぁ〜…あ〜…あ〜あ、はい」

…完全に気を抜いていた。
不意に掛けられた言葉に、バサバサとコピー用紙が手から落ちていったではありませんか。
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