興味があるなら恋をしよう−Ⅰ−
「本当はさ、今日だって葵に会わせてやりたかったけど、連れて来ない方がいいんだよな?」

「うん、会ったらあの子が帰る時…寂しくなるでしょ?
その影響で、匠だって、後、家で大変になるし。
バイバイ出来なくなって、ここに泊まるーとか、言い出しても困るでしょ?
寂しい思いはさせていると思うけど、…このまま、退院する迄、お願い」

手を合わされた。

「うん、お願いされなくても解ってるよ。あ、忘れるところだった。このために来たのに。いい物見せてやるよ。
え〜っと、…あ、これだ」

この部屋は携帯はOKだ。俺は葵の側に寄り、携帯を出し、二人して顔がくっつきそうな程寄せ合い、一緒にそれを見た。

「公園に行ったんだ。…雨だったんだよ、この日。
それでも行くって言うから。…あ、これ」

レインコートを着て傘を差し、手を上げている写真だ。

「アニメの子供が動いてるみたいでさ、長靴とか履いて歩くと面白いよな」

「何、それ〜。人間の可愛い娘なんですけど」

「解ってるよ。でもさ、小さいから動きとか一々コミカルで面白いじゃん。
ほら、これ」

今度は動画を見せた。

「な?あ、これ、この表情なんて完全に女優だよな〜。悦に入ってるっていうか、カメラを向けられてるって意識があるんだよな」

「おませさんなのよ、女の子は。あ〜里緒〜、我が娘ながら可愛い〜」

「そうだな。里緒、頑張ってるぞ。甘えるときもあるけど、手伝いとかもしてくれるし。野菜切ったりしてる」

「うん。今は里緒なりに、お姉ちゃんになるからってしてるのよね。…反動で帰ったら甘えたくなるかも知れない」

「そうだな。母親と会えないのに、我慢していい子で居ようって頑張ってるからな。
あー、もうそろそろ、行くよ。首を長くしていつも待っててくれてるからな、お姫様が」

「うん。じゃあ、匠パパ、お願いね」

「おお。葵も気をつけろよ。退院の時には連絡して来いよ。じゃあな」

「うん。あ、匠。…ちょっと」

「ん?」

葵は俺を引き寄せ、小声で耳打ちした。

「もう。来ちゃ駄目じゃん。解ってるでしょ?ここは女性ばっかりなんだから。
若いお母さん達見て?
匠が来た時から、色めき立ってるでしょ?
匠、余所のパパより…格好いいから。ハハ」

「は?!馬鹿、何言ってる…。普通に見舞いじゃないか。
そんな事言ったら退院の時も来られないじゃないか」

「フフ。まあ、いいから。じゃあね。里緒、宜しくね」

バイバイと手を振られた。

「ああ…、じゃあな」

全く…。何言ってる…。
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