8歳上のパパ【長期更新停止中】
それから一人お客さんがやって来て、会話は途切れてしまったけど、あたしの頭の中はそのことでいっぱいだった。
エビフライ弁当って言われてるのに、唐揚げ弁当を出そうとしたり、おつりを間違えて渡しそうになったり。
とにかく全然バイトに集中できなかった。
「なんかすみません……」
ビニール袋に入れたお弁当を渡しながらスーツ姿のお客さんに頭を下げると、その人はニコリと微笑む。
「いいえ。逆に元気出ました」
「え……?」
「いや……僕、最近仕事でミスが重なってちょっと落ち込んでいたもので……。
でも、店員さんのおっちょこちょいだけど頑張っている姿見てたら、僕だけじゃないんだなぁって。
ありがとうございます」
「え、いや、あの……」
なんと言っていいのか分からず戸惑うあたしに、彼はもう一度柔らかい笑みを見せると、ピンと背筋を伸ばして去っていく。