夢を忘れた眠り姫
「幸せ荘」という、昭和のギャグマンガの中にしか存在しないようなレトロなネーミングに相応しく、超絶にオンボロ…もとい、古き良き時代の名残を残す築40年のこの木造アパートは、来年4月に取り壊しが決定したらしい。

そしてその後、鉄筋コンクリートのオートロックマンションへと生まれ変わるらしいのだ。

間取りは単身者向けの1LDK。

ちなみに、すでに決定している新名称は「ハッピーハイツ」。

どうしても幸福成分は残したいらしい。

今は亡き先代のお父様のポジティブシンキング、博愛スピリッツを、娘である大家さんがしかと受け継いでいるのであろう。

まぁ、ぶっちゃけそこはどうでも良い。

問題は、建物がグレードアップするのに伴って、家賃もそれに見合う金額にはね上がってしまうという事だ。

現時点では一月4万5千円。

中央線沿線で、駅まで徒歩10分(スニーカーで競歩で移動すれば6分弱でイケる)という比較的好立地でその値段は破格だと思う。

ただ、部屋は押し入れありの6畳一間のみで、ミニキッチン、和式のお便所と体育座りをしないとボディが収まり切らない風呂がまのお風呂という水回りでは、難色を示す人が結構いるらしく、8部屋あるうちの1、2部屋は常に空いている状態で、私が借りる時もすんなりと契約できた。
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