夢を忘れた眠り姫
このマンションの場合、幸せ荘に比べて断然防音設備がしっかりしているからか、洗濯は23時まで許可されているようだ。

2LDKという事は複数人で同居する可能性の方が高く、それだけ洗い物も多く出る訳で、それぞれが仕事をしている場合なんかは夜遅くまで洗濯機が回せないとすこぶる不便だもんね。

休日にまとめて、というのは実はなかなか難しい。

肌に直接触れない物、例えば上着なんかは元々何回か着てから洗ってるし、普通に放置しておけるけど、濡れているもの、うっかり酷く汚してしまったものなんかを何日間もそのままにしておくのはちょっと耐えられそうにない。

だから洗濯許可時間が長めに設定されているこのマンションは、そういう点でもポイントが高いと思う。


「貴志さん、いますか?」


洗濯物を片付けた後、リビングダイニングキッチンに行ってみたけど姿が見えなかったので、彼の部屋の前まで移動し、そう声をかけた。


「ああ、いるよ」

「お風呂いただきました。お次どうぞ」

「分かった。ありがとう」

「それで私、今日はもう寝る準備に入ることにしますね」

「そう、お休み」

「はい、お休みなさい」


挨拶しあい、私は部屋へと戻る。

コタツの電源を切り、壁際に寄せて布団を敷いていると、隣の部屋、次いでバスルームと、順にドアを開閉する音が響いて来た。
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