レンタル彼氏


電車を乗り継ぎ家へと帰ったところに
どこかで見てたのか?
ってくらいのタイミングで
美奈先輩から電話がかかってきた。


「帰ってきたのぉ?
まだ一緒に居るのかな?
お邪魔だったかしら?」


「邪魔じゃないですよ
もう帰ってます」


「帰ってるの?家に?
藤堂に電話しても出ないしさ」


「出ないでしょ〜ね」


水口さんと久々に一緒だから
電話とかシャットアウトだよ。


「何?テンション低っ!」


「はい 魔法は解けちゃったので
あはは シンデレラにもなれませんでした」


「は?」


「シンデレラは最後には
幸せになれますけど
あたしは現実に戻っただけです」


「ラブラブだったんじゃないの?」


「ラブラブ・・・
それは演技でね
主任って俳優さんですよ
役に成り切ってましたから
はあ・・・」


大きなため息で閉めるあたし。


「どーしたのよ
飲みに行く?話聞くよ?」


「うーん 出るのめんどくさい!」


「胸に溜めない
パーと吐くと元気になるよ
何があった?」


「何があったとか
具体的は・・・ないんですけど」


ヤバイ
いつもの美奈先輩の誘導尋問に
引っかかって 初日の夜のこととか
話してしまいそう。


「演技でも3日間幸せだったんで
現実に戻ると 力が抜けちゃって」


「夢を現実にしなさいよ」


「あはは 美奈先輩酔ってます?
現実に出来るわけないじゃないですか
勝てませんからあたし」


「勝つ?何に勝つわけ?
めんどくさっ」


「でしょ でしょ
めんどくさい女なんです
あたしって」


「自分でわかってる!っていうのも
すごいね
まぁ また相談あったら電話して
いつでも話を聞くからね」


美奈先輩のさりげない優しさに
涙が出そうになる。


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