雫に溺れて甘く香る
「……相談はしません。泣きつくくらいなら、始めなければよかったんだから」

「ふぅん? まぁ、いいけど。女の子はたまに、泣きついても問題ないと思うけどね~」

「私みたいなのが泣きついたところで、可愛くもないでしょう?」

「あ。それはないかな。嫌だと思っている後輩や野郎ならともかく、可愛がってる後輩に泣きつかれたらグッとくるかもしれないよ?」

ニコニコと穏和な笑顔を見せている先輩をまじまじと覗き込む。

彼の真意はなんだろう?

考えていたら事務デスクから原さんがツカツカと書類を持って近づいてきた。

「お二人とも、うちの子たちの気が散るので、そういう話題は休憩室でお願いします」

見てみると、事務デスクの子達がチラチラと私と村田さんを見ている……だけじゃなく、そわそわニヤニヤしていた。


「休憩室にワザワザ呼び出して、こんな話をしたら、冗談にならないじゃないか」

あっけらかんと爽やかな笑顔で呟く先輩を、今度は原さんと私で凝視する。

「今の、どう考えても村田さんが工藤さんに“俺に泣きつけば?”って誘っているようにしか見えませんでした」

「やだなー。それなら飲みに誘い出すよ。その方が泣きつかれやすいと思うし」

確かにその方が確率は上がるよね。

今度は原さんと村田さんで話始めたから、こそっと背を向けてデータ作成の続きをし始めた。
< 142 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop