雫に溺れて甘く香る
彼女からの連絡?

あー、そうね。貴方もそんな優しい視線もできるんだ。

まぁ、そりゃそうだよね。そんなことを考えて、嫌な気分になるのは自分勝手すぎるけど……。

ぐいっとカクテルを飲み干して、ぞんざいにグラスを置いた。

「続木さん。同じのおかわり」

スマホから視線を外し、彼は眉を微かに上げる。

だけど、何も言わずにカクテルを作り始めた。


……私は嫌な女だな。そう思っても止まらない。

中野さんがピラフを持ってきて、それを食べながらまたカクテルをおかわりして……。

そして、普段よりキツめのカクテルに私は酔っぱらった。




「工藤さん弱いのに、お前は普通にカクテルを作ったんだろ」

うーん。篠原さんっぽい声がする。


……するけど、眠い。


「まさか、四杯でつぶれるなんて思わないだろ」

続木さんの声も聞こえる。


ゆっくりと目を開けてから起き上がり……とても静かなお店をぼんやりと辺りを見回した。


あれー? どうしてお客さんいないんだろう。

しかも、どうして照明が半分消えているの?

不思議に思っていたら、ジャケットを着た中野さんが目に入った。

「あ。起きたみたいだね。じゃ、俺は帰るから。バイバイ工藤さん」

そう言って、本当にバイバイと手を振って店を出ていった。


……バイバイ?


慌てて腕時計を見ると、二時を過ぎていて目を丸くする。

嘘でしょ。酔っぱらって寝ちゃうとかあり得ないー!
< 25 / 180 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop