サムデイ アナザーデイ
タイトル未編集

「私を女王さまと呼ぶか、それとも姫さまと呼ぶか、あなたに選ばせてあげる」

卒園式の日に、僕のハッピーなハートをぶち壊すように、キミカちゃんは言った。


僕は、幼稚園を2年間、休まないで通ったので卒園式で表彰された。銀メダルをもらった。僕をいれて、表彰されたのは3人だった。金メダルは、3年間休まなかった松元 アキラ、そして、銅メダルは、1年間休まなかった松元 タスクだった。そう二人は双子の兄弟だ。僕は、同じ顔に挟まれて表彰された。


銀メダルを首にかけたまま、卒園式に来てくれた母親の待つ車に行こうとすると、キミカちゃんにツカマッテ、冒頭の言葉を聞いた。


僕は、

「キミカちゃんとは、小学生が別々になるから、それは、ちょっと……」

と冷静に言って母親の待つ、車に急いだ。キミカちゃんの横をすり抜け、車に向かう。キミカちゃんの視線を感じたが、とにかく車に急いだ。

車まで、あと少しで友達の北島くんに声を掛けられた。

「テレビゲームのソフト、ちゃんと返せよな」


北島くんは、近所だから、僕は、わかったと言うと車に乗り込んだ。車が走りだそうとすると、誰かが窓をノックした。林くんだった。僕は、窓を開けると林くんが言った。

「銀メダル、おめでとう!」

僕は、ありがとうと言い、林くんに手を振って幼稚園を去った。


20年後ー。

僕は、地元の市役所に勤めていた。ナゼか奇遇にも松元兄弟も勤めていた。フロアが違うので普段は会うことがなかった。帰りの駐車場で、たまに会うと

「よう、銀メダル!」

と言われる。僕は、笑って車に乗り込む。

(僕も、返事をしたいが、あいつら格好が同じだから、アキラかタスクか分からないんだよね……)

悶々としながら家に帰り、風呂に入り御飯を食べて寝た。朝、起きて市役所に行く。窓口で座っていると、カップルに声を掛けられた。


「おー、お前、ここに勤めてたんだ!俺だよ、俺、北島だよ!」

北島は、幼稚園の頃と大分、変わっていて僕は、分からなかった。僕は、曖昧に返事をして、元気そうだね、と言った。北島の隣には何となく面影のある女性が…。


キミカちゃんだった。僕は、そう思った。北島は、僕の彼女にへの視線を感じて言った。


北島
「俺の女房だよ。本当にできた女で………」

北島は、僕に話始めた。止まらない。キミカちゃんは、うなづいていた。僕は、それを、ただ見ていた。気が
つくとキミカちゃんは、何処かに行き、北島だけがいた。

北島
「松元兄弟も、ここに勤めているんだろ。今度こそ、金メダルとれよ!」


「まだ、休んでいない。57歳で部長になり、60歳で自分で作った金メダルをかけて、市役所を後にする予定だよ」

北島
「その後は?」



「老後を楽しむ。俺にも、お前の奥さんのような、キミカちゃんのような奥さんがいたらなぁ……今は彼女すらいないけど、俺も頑張るぜ!!」


北島
「……彼女は、キミカちゃんではないよ。キミカちゃんの双子の妹だ。小さい時は体が弱くて幼稚園に通えなかったんだ。今では、もう元気で俺とよくサイクリングをしている」


「なんだ、そうか、そうだったんだ!じゃあ、北島、お前、キミカちゃんにも最近あっただろ?元気にしてる?」


北島
「お前、何も知らないんだな……。キミカちゃん、大学出て、研究していた生物学の何とかで北極に船で行ったんだよ。そんで船は遭難して、救助隊が船を見つけた時は残骸だけだった。生存者ゼロで捜査は打ち切り。遺体のないまま、キミカちゃんの御葬式は、行われたよ。もう大分、経つよ」

僕は、黙って聞いていた。そして、そうか、と言った。その後、北島と2,3言葉を交わして北島は差って行った。


僕は、その日、そつなく仕事をこなして帰宅した。




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