おにいちゃんの友達
「ううん。別に何もないよ。」

「それならいいんだけど。」

駅のバックは、オレンジ色に染まっていた。

最近の夕暮れは、一気に訪れる。

さっきまでの青い空は暗闇に向かって準備し始めていた。


体育祭が近づいてきた。

応援団の練習もハリボテも佳境に入る。

昼休みは皆で応援合戦の練習。

ハリボテは放課後残れるメンバーで作成を進めた。

委員長のハルトは、ほぼ全ての活動に参加しているようだった。

マドカからあんな話を聞いていたから、少し体調が気になった。

心なしか、ハルトに対して優しい言葉づかいになっている。

ハルトと二人で打ち合わせをしていた時。

私が素直に返事したら、ハルトはギョッとした顔で私をじっと見ていた。

「な、なによ。」

「いや、最近、河野さん変わったなって。」

「変わってないわよ。」

「変わったよ。」

「変わってない。」

「いや、変わったね。」

やっぱりイライラする素を持ってるのよね、山崎ハルトって奴は。

「じゃ、変わったってことにしといてあげるわ。」

「どうして変わったんだよ。」

しつこい。

「渡邊マドカさんから聞いた?」

思わず、体も言葉も静止する。

マドカはあまり言いたくなさそうだったのに、私のために教えてくれた内容だったわけで。

きっとハルトもそのことは他人に話してほしくなかったであろう話だと思う。

久しぶりに。頭をすごい勢いで回転させた。
< 127 / 152 >

この作品をシェア

pagetop