おにいちゃんの友達
「実はさ、俺のばあちゃんが認知症でずっと施設に入ってるんだ。母さんも仕事しててどうにもこうにもならなくて、施設に預けたのは苦渋の決断だったみたいだけど。俺も母さんも時間ができたらいつもばあちゃんに会いに行ってるんだ。」

「そうだったんだ。」

兄はあごに手をやりながら、真剣な顔をして頷いた。

・・・知らなかった。

「ばあちゃんは、昔はすっげー頭も切れて、手先も器用で、男並みに何でもできる人だったんだ。だけど、じいちゃんが死んでからすっかり落ち込んじまって、急激に認知が進んじゃってさ。今では母さんのことも俺のことも忘れちゃってるよ。寂しいけど、それを寂しいって思ったらばあちゃんが悲しむだろうなって思うから、それもばあちゃんなんだって受け入れるようにしてる。」

「そんなおばあちゃんの影響で福祉関係に進もうと思ったのか?」

「そうだな。母ちゃんもばあちゃんを施設に預けたことをすっげー後悔しててさ。ばあちゃんの頭がしっかりしてたら、こういう状況どう思うんだろうって、いつも落ち込んでる。だけどさ、家にいたからって幸せかっていうと、その保障はどこにもなんだよね。ひょっとしたら、施設に入ることで少しでも明るく元気に生きることができるってこともあるんじゃないかって。すげーなって思う介護士さん達を何人も見てきて、だから俺もその手助けがしたいなってさ。まぁこれも俺の単細胞的な発想から来るのかもしれないけど。」

マサキは熱く語った自分に照れたのか、一息つくと恥ずかしそうに頭をかいた。

正直、今の話はマサキらしいと思った。単細胞だなんて、ちっとも思わなかった。

「マサキ、お前はやっぱすごいよ。」

兄はゆっくりと言った。

「シュンタに褒められるなんて、俺もちーとは成長したかな。」

「元々、マサキはすごいんだ。俺にない物いっぱい持ってる。敵わないよ。ずっとそう思ってきた。」

「馬鹿いえ。謙遜しすぎだろが。逆に嫌味に聞こえるぞ。」

兄は優しい顔をして笑った。







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