熱恋~やさしい海は熱砂の彼方~

フトンの中であたしは大声を上げた。

なんで? 夕方、あんなことがあったばかりなのに…、それからまだ何時間も経ってないのに、なんであたしンちに来れるの?


「なぎさちゃんのお母さん、こんばんは」

「アレ? みさきちゃん、そのほっぺたどうしたの?」

母さんは声が大きいから、2階にいるあたしにもフツーに声が聞こえる。

「あぁ、コレですか? みさき、なぎさちゃんにイジワルしちゃって、ソレで叩かれちゃったんです」

喜屋武みさきのほうも、演劇部の看板女優だけあって、腹式呼吸の声が2階にまでフツーに聞こえてくる。

「えっ、うちのなぎさに叩かれたの!?」

母さんがすっとんきょうな声を上げた。ふだんおとなしいあたしが、誰かを叩いたのが信じられないということだろう。


ひょっとして……とあたしは思った。喜屋武みさきは、あたしに叩かれたことを、母さんに言いつけに来たのかもしれない。

ところが彼女は意外な返事をした。

「でも叩かれるようなことしたみさきが悪いんです。だから、なぎさちゃんに謝って、仲直りしたいんです」
< 147 / 200 >

この作品をシェア

pagetop